インターネット上での誹謗中傷によって企業の信用が傷つけられるケースが増えています。対応が遅れることで、さらに風評被害が拡大し、取引先や顧客にまで影響を与えることも少なくありません。こうしたときに頼れるのが、誹謗中傷対策を専門とする各種のプロフェッショナルです。本記事では、企業が誹謗中傷の被害を受けた際に相談すべき専門家と、それぞれの役割や得意分野について分かりやすく解説します。
誹謗中傷対策でまず頼るべき専門家は誰か?
誹謗中傷の被害に直面した企業が、まず誰に相談すべきかという点で迷うことは少なくありません。法的な対応をすべきか、検索結果やSNSの印象改善に注力すべきか、そもそも投稿の内容に問題があるのか。こうした判断を適切に下すためには、状況に応じた専門家の力を借りることが不可欠です。
結論からいえば、誹謗中傷対策において最初に相談すべき相手は「弁護士」もしくは「ネット風評対策を専門とする企業」です。なぜなら、投稿が違法かどうか、削除や開示請求が可能かどうか、または拡散リスクが高いかどうかといった初期判断を、素人だけで行うのは非常に困難だからです。
弁護士であれば、名誉毀損や業務妨害といった法律に基づいた判断が可能です。一方、ネット対策企業は、検索結果やSNS上の風評管理、逆SEO、サジェスト対策などに特化しており、実務面でのサポートに長けています。
最も避けたいのは、「誰にも相談せずに自社だけでなんとかしようとする」ことです。対応が遅れることで投稿が拡散し、削除も難しくなり、さらに信頼を損なう悪循環に陥る可能性があります。まずは専門家に相談し、現状のリスクを客観的に把握することが、誹謗中傷対策の第一歩となります。
弁護士に相談すべきタイミングと依頼できる対応範囲
誹謗中傷対策において、法的な側面からの対応が必要な場合は、迷わず「IT分野に強い弁護士」に相談すべきです。では、どのタイミングで弁護士に依頼すれば良いのか、それにより何ができるのかを理解しておくことは、スムーズな対応に直結します。
まず、投稿内容が明らかに虚偽である、攻撃的な表現が含まれている、個人情報がさらされているといった場合には、すぐに弁護士への相談が必要です。なぜなら、こうした内容は名誉毀損、信用毀損、プライバシー侵害、業務妨害などの違法行為に該当する可能性が高く、法的な削除請求や損害賠償請求が視野に入るからです。
弁護士に依頼できる主な業務は以下の通りです:
- 投稿の削除請求
- 発信者情報開示請求
- 仮処分・訴訟の代理人業務
- 損害賠償請求(民事)や刑事告訴(名誉毀損罪など)
- 書面による警告や交渉
特にIP開示請求や投稿削除の仮処分は、法律の知識と裁判所対応が求められるため、弁護士のサポートが不可欠です。また、社内対応のアドバイスや、外部への発信内容のリーガルチェックも重要な役割です。
注意したいのは、すべての弁護士が誹謗中傷に詳しいわけではない点です。IT・ネット誹謗中傷に精通している事務所や、実績のある弁護士を選ぶことが、スピーディかつ的確な対応を進めるためのカギとなります。
逆SEOやモニタリングはIT専門会社に任せるのが得策
法的対応と並行して必要なのが、ネット上に広がる風評そのものへの実務的な対策です。ここで力を発揮するのが、逆SEOやネットモニタリングを専門とするIT対策会社の存在です。これらの企業は、誹謗中傷そのものの削除が難しいケースでも、検索結果やSNSの印象改善を通じて被害の抑止やイメージ回復を図ることができます。
たとえば、Google検索で企業名を入力した際にネガティブなまとめサイトや掲示板の投稿が上位に表示されてしまう場合、逆SEOにより自社運営のブログ記事やプレスリリースなどを上位表示させ、ネガティブ情報を相対的に押し下げることが可能です。これにより、一般ユーザーの目に触れる情報の印象をコントロールできます。
また、リアルタイムで企業名やブランド名がどのように取り上げられているかを監視する「ネットモニタリング」も重要な施策です。炎上の兆候やネガティブな口コミをいち早く検知することで、早期の対応につなげることができます。
ネット対策会社の強みは、“法的には問題ないが印象が悪い”というグレーな投稿にも対応できる点です。弁護士が対応しにくい範囲をカバーする存在として、企業のオンラインリスク管理を支えてくれます。
依頼する際には、費用、実績、使用しているSEO技術、継続サポートの有無などを比較検討し、自社のリスクレベルに適した会社を選ぶことが大切です。
各専門家の連携で誹謗中傷の被害は最小限にできる
誹謗中傷対策において最も効果的なのは、「ひとつの窓口に任せきりにする」のではなく、複数の専門家と連携して問題にあたることです。法的な対応が必要な部分は弁護士が、ネットの印象管理は専門の対策会社が、そして社内対応や顧客対応は企業自身が担う。こうした役割分担ができていれば、被害の拡大を防ぎ、よりスピーディに信頼回復を図ることが可能になります。
たとえば、弁護士がIP開示請求を進めている間に、ネット対策会社が逆SEOやサジェスト対策を行い、さらに企業側ではSNSやプレスリリースでの適切な情報発信を行うといった「三位一体の対応」が理想です。
また、風評被害や誹謗中傷の再発を防ぐには、対応後の体制づくりも欠かせません。社内教育や広報体制の見直し、情報発信のルール整備などを含めて、総合的な視点で企業ブランドを守る仕組みを構築していくことが求められます。
そのためにも、初動から複数の専門家に相談し、連携体制を築いておくことで、迅速かつ柔軟に対応できるようになります。誹謗中傷の被害は、専門知識だけではなく“横のつながり”があってこそ最小限に抑えられるのです。
まとめ
企業がネット上で誹謗中傷の被害を受けたとき、最も重要なのは「適切な専門家に早期に相談すること」です。法的対応には弁護士、ネット印象管理には対策専門企業、それぞれのプロフェッショナルの力を借りることで、対応スピードと質が格段に向上します。そして、社内での連携や情報整理も並行して行いながら、多角的なアプローチで信頼回復を図ることが、企業のブランドを守るために不可欠です。複数の専門家と連携することで、誹謗中傷という見えにくい脅威にも的確に対処できる体制を整えましょう。